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音楽にかまけて その7 〜〜お酒とコーヒーと音楽の店 楽屋 青山将之


休憩室×音楽屋×くつろぐ場所。そんな意味を込めて名付けられた楽屋さんは、音楽を聴きながら気軽に飲めるお店です。レコード・CDの数は、村上で一番!オーナーが集めたジャズをメインに、ブルースやボサノバなどが揃います。また、軽食には注文を受けてから作るというポップコーンや、お酒の〆に大人気のお茶漬けパスタなど、こだわりのメニューがありますよ。『明朗会計の気軽な音楽酒場』、楽屋で日常空間を少し離れ、音楽に浸ってみませんか?

 

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 <大瀧詠一>


とある夜ふけ、ラジオのチャンネルをまちがえてFMにあわせたら大瀧詠一がしゃべっていて驚いたことがある。バンドはっぴいえんどからソロ活動を始めた初期のころまで、70年代の彼の歌がとくに好きで、楽屋でも常日頃聴いているが、普通の話し声を聴くのはおそらく初めてだと思う。
調べてみると、それは年に2回ほどシリーズ放送されている「大瀧詠一のアメリカン・ポップス伝」という番組だった。
大瀧詠一と言えば、メディア露出が極めて少なく、どこか神秘的な存在だったので、偶然にも彼の話をリアルタイムで聴けたのがうれしかった。
そして、昨年大みそかの訃報。
まるで隠とん生活を送っていた仙人がふっと消えてしまったかのような、あまりにも突然の去り方だった。

 

<伴田裕>


楽屋の新年は、伴田裕さんのライブから始まるのが恒例となっている。2002年正月の楽屋初のジャズライブがその始まりだった。
演奏は、ベーシストの横田康雄さんとサキソフォニストの伴田裕さん。
開店当初はライブをする店にするつもりはなかったが、ギターの弾き語りなどのライブをたまにやるようになり、いつかジャズもできたらと思っていたので、このライブはとくに感慨深いものだった。しかも、楽屋で初めてジャズを演奏してもらうのが地元出身の二人のジャズ奏者ということが、とてもうれしかった。
それから毎年、東京で活躍中の伴田さんは多種多様な奏者を引き連れて来演し、新年の幕を開け続けてくれる。
穏やかな伴田さんの、冷やかで迫力あるサックスで、新年の喝を入れてもらっている。

 

<岡田勉>


ベーシストの岡田勉さんが、先月なくなった。
新潟のライブで知り合って、楽屋にも4回演奏に来てくれた。
「最近あなたの名刺が何度も目の前に現れるので、ライブに行きたい」という岡田さんの人なつっこいメールに端を発して、2007年末、峰厚介(ts)、村上寛(ds)、野力奏一(key)、そして岡田勉という、日本ジャズ界の重鎮4人組が、本当に楽屋にやってきた。
峰さんがわたしを見て、「まだ若いんだ」と笑った。
村上さんはクールで、野力さんはユニークだった。
岡田さんは、とにかくやさしかった。
そして最高級のジャズが楽屋で奏でられた。
ベースが木の楽器だということを改めて思わせるような音色を、岡田さんは聴かせてくれた。人柄のよく表れた、温厚かつ重厚なベースだった。

 

 

<キャノンボール・アダレイ>


キャノンボール・アダレイの「サムシング・エルス」を久しぶりに聴く。
実質はマイルス・デイビスの主導で作られたいわく付きの名盤だが、名目上のリーダーとされたキャノンボールのアルトサックスによるソロが、とてもいい。
聴きどころはやはり、一曲目の「枯葉」。
ジャズのスタンダードとしてすっかり定着しているものの、もともとはシャンソンの名曲であるこの「枯葉」には、「Les Feuilles mortes(死んだ葉)」というフランス語の原題がある。
日本語で「枯葉」と訳されるこの曲は、英語では「Dead Leaves(死んだ葉)」という直訳ではなく、「Autumn Leaves(秋の葉)」と名付けられた。
「秋は去る」という意味にもなり、曲の雰囲気をよく表している名訳だと思う。
秋の夜に、合わないわけがない。

 

 

<ジェリー・マリガン>


音楽理論のことはちんぷんかんぷんだが、マイナー(短調)の曲は悲しく聞こえるとよく言われる。ショパンの「前奏曲集第4番ホ短調」も、何とも悲しい雰囲気にあふれている。
クラシックなど一切聴かないくせになぜこの曲を知っているかと言うと、ジェリー・マリガンの代表作「ナイト・ライツ」収録の「プレリュード・イン・Eマイナー」を気に入ったからだ。プレリュードが前奏曲、Eマイナーがホ短調ということも、マリガンのおかげで知った。
バリトンサックス奏者であるマリガンがショパンの同曲をアレンジして、ボサノバ風のさみしげなジャズに仕立てている。
肌寒い秋の夜長に熱いコーヒーでもすすりながら、しんみり聴きたい曲。洋酒も合うと思われるが、酔って聴くと悲しみが倍増しそうだ。

 

 

 

<細野晴臣>


暑い。
秋の待ち遠しいわたしがこの時期をやり過ごすために聴きたくなるのは、暑苦しいジャズ、やかましいロック、涼しげなボサノバ、そして細野晴臣の「トロピカル・ダンディー」と、だいたい相場が決まっている。
はっぴいえんど、イエロー・マジック・オーケストラなどで活躍した細野晴臣は、ソロでの傑作も多い。
ソロアルバムとしての二枚目にあたる「トロピカル・ダンディー」は1975年の録音で、何ともカリビアンと言うか、東洋的と言うか、独特の異国情緒がある細野色満載の一枚。
まったくやかましくなく、暑苦しくもなく、それでいて大して涼しげでもないが、蒸し暑い夜、冷たいビールでも飲みながら聴くのに非常に適している。
夏の納涼盤としてお薦めしたい。

 

 

 

<レッド・ガーランド>


新宿ゴールデン街に、「シラムレン」というバーがある。
極度に暗く、カウンターのみでおそらく10人も入れない。入りにくさも満点であれば、入ってしまえば居心地のよさも満点という店の典型である。
ジャズを聴き始めていたわたしはそのシラムレンで、ジャズ名盤集のような文庫を眺めながら、その中の一枚、レッド・ガーランドの「グルービー」をリクエストしたことがある。
浅川マキのようなママはその盤をかけてはくれたが、わたしがそんな本を見ていたことを不快に感じたらしく、何やら苦言を呈された。
楽屋でこの盤を回すと、わたしはこの何とも青くさい行為が、恥ずかしくも懐かしくも思い出される。とはいえやはり名盤は名盤。極上のピアノトリオの演奏は、いつ聴いても素晴らしい。

 

 

 

<マヘリア・ジャクソン>


わたしの好きな曲のひとつに、「ジェリコの戦い」がある。
旧約聖書に出てくる戦いの話が歌詞となった黒人霊歌らしいが、ジャズのスタンダードとしても知られている。
「ジェリコの戦い」という名前がいい。と言っても好きになったのは、やはり曲がいいからである。
この曲には、グラント・グリーンのギター、コールマン・ホーキンスのサックスといった名演がある中で、その迫力においては、マヘリア・ジャクソンの歌が突出している。
同曲収録の実況録音盤「ニューポート1958」は、心持ちが穏やかではない時に聴きたい一枚。
ピアノの伴奏で歌われる力強いゴスペルを静かに聴いていると、心が洗われる思い。そして終盤の「ジェリコ戦い」のころには、もう気分が晴れやかになっている。ことが多い。

 

 

 

<沢田研二>


レコードを聴く人がめっきり減ってしまって久しいが、プレーヤーはなくともレコードはあるという人は多い。
楽屋ではレコードの持ち込みを歓迎しているので、家で聴けないレコードを楽屋で聴く方や、さらにはそれを置きレコードにして下さる方もある。
知らなかった音楽が聴けるので、わたしにとってもうれしいことであり、それが愛聴盤となることもある。
自分でも気に入るとは思ってもみなかったが、ジュリーの「ジュエル・ジュリー」も実はそんな一枚。
ジャケットからして沢田研二ではなくジュリーという名が似合う、グラム歌謡とでも言うべき1974年の作品で、ジュリーの歌声と井上克之バンドのシンプルな演奏がいい。
これは意外な発見だった。
お持ちいただいた一弥さん、感謝しています。

 

 

 

<ザ・クラッシュ>


カウンターで音楽好きのお客さんが無人島レコード談義。
その盤も捨てがたいなあなどと、ひとり興味深く聞き耳をたてた。
無人島レコードとは、無人島に行くならこれを持って行くという、それだけ自分の中で大切なレコードのことで、彼らは三枚という制限で語っていた。
わたしならと考えると、一枚目は浅川マキライブと決まっているが、二枚目以降がむずかしい。
「男はつらいよ」なら一作目の最高位は揺るがず、第二位以降のランクが変動するのに似ている。
考え始めると、ふとクラッシュの「ロンドン・コーリング」が浮かんだ。単なるロックにとらわれない多彩な曲々、木陰に飾っても絵になるジャケット。
まさに無人島にふさわしい盤ではないか。
二枚組というのも大きなポイントだ。

 

INFO

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楽屋 青山さんと交流のあるアーチストとの思い出話など、音楽でつながった人達の温かさが伝わってきます。個性ある人達が奏でる音楽を聴いてみたくなりませんか?

 

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