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音楽にかまけて その12 〜〜お酒とコーヒーと音楽の店 楽屋 青山将之



休憩室×音楽屋×くつろぐ場所。そんな意味を込めて名付けられた楽屋さんは、音楽を聴きながら気軽に飲めるお店です。
レコード・CDの数は、村上で一番!オーナーが集めたジャズをメインに、ブルースやボサノバなどが揃います。また、軽食には注文を受けてから作るというポップコーンや、お酒の〆に大人気のお茶漬けパスタなど、こだわりのメニューがありますよ。
『明朗会計の気軽な音楽酒場』、楽屋で日常空間を少し離れ、音楽に浸ってみませんか?

 

 

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<スピッツ>


90年代以降のいわゆるJポップはほとんど知る機会がなく、また知りたいとも思わなかった。とはいえ、自分で求めて聴かなくとも、世の中のはやり歌は耳に残る。
スピッツの「ロビンソン」という曲もそんな存在だったが、先日聴く機会があり、不思議な感覚になった。
わたしのうとんでいたJポップのイメージとは何やらちがうのではないか。何がどうちがうのかはわからないが、これは名曲だ、と、ふと思った。
この曲を好きだった友人が、若くしてこの世を去った。
彼とは音楽の話はしたことがなかったが、最後の別れのときにこの曲のよさをわたしに教えてくれた。とむらいの場に響いたやさしくきれいな歌声は、長い闘いを終えた彼をぐっすり眠らせてくれたと思う。

 

 

 

<スティーリー・ダン>


年齢とともに音楽の趣味は変わる。
お客さんが貸してくれたスティーリー・ダンを聴いていて、改めてそう思った。
AOR(大人向けロック)という、何だかよくわからないジャンルでくくられる米国のバンドだが、その爽やかで上品な音楽は、以前のわたしならとても聴く気になれなかったと思う。
ロックと言えば、ガンガンに荒くれてなければいけなかった。
それがどうしたことか、その爽やかさが素直に耳に入ってくる。あれ?これ、いい。今では楽屋でも盤を仕入れ、よくターンテーブルに乗る定番のひとつになった。
AORというだけに、わたしが大人になったということか。
夏の西日がきつい日暮れ時の楽屋で、名盤「ガウチョ」を聴いていると、心なしか涼しくなる。

 

 

 

<トム・ウェイツ>


楽屋開店当初、押し売りが来たらどう対処しようとか、お客ゼロの日はいつ来るのだろうとか、さまざまなことを考えたが、その中のひとつに、楽屋で知り合った二人が恋仲になり、結婚することになればどんなにかうれしいだろうというのもあった。
そして本当にうれしいことに、今まで二組の夫婦が誕生し、結婚式にも参加した。
楽屋でトム・ウェイツを好きになった新婦は、披露宴の入場曲に名バラード「トム・トラバーツ・ブルース」を選んだ。華やかな花嫁ドレスと、真夜中が似合う酔いどれ詩人、トム・ウェイツ。
陽と陰のような二者だが、これがすばらしかった。
おだやかなピアノとしわがれた歌声が会場に流れ、美しい二人が入場してきたとき、涙がこぼれそうになった。

 

 

 

<ベビーフェイス・ウィレット>


ひょんなことから走るのが好きになり、音楽を聴きながらちょくちょく走っている。
小さな音楽再生装置に聴きたい曲を何百か入れ、それが無作為に選曲されるという仕組みで、次に何が出てくるかが楽しみでもある。
入れてある曲のほとんどがロックだが、数曲しのばせてあるファンキーなジャズが選ばれると、一服の清涼剤のようでさらに気持ちよく走れる。
その代表がオルガン奏者ベビーフェイス・ウィレットの「モー・ロック」。
小気味よいタテノリ感が走るリズムととてもよく合う。なぜか、いわゆるスタンダードジャズではどうもまだ走る気にならない。
そのうち試してみたいとは思うが、少なくともボサノバは不向き。失速してしまう。

 

 

 

<クワルテート・エン・シー>


小国の山あいの民宿に音楽の聴けるかまくらがある。
その名も「かまくら音泉」。直径約20mの巨大なかまくらの中にオーディオが設置してあり、好きなCDを持参して聴くことができる。
再生装置や雰囲気のちがいも関係あるかもしれないが、極寒の雪室の中で聴く音はよりリアルに聴こえるからおもしろい。
ボサノバを歌う四姉妹、クワルテート・エン・シーの「ビリンバウ」を聴いたときは驚いた。天井から降ってくるハーモニーもさることながら、ドラムのシンバルが生々しいことおびただしい。
まさに臨場の感。
この曲はこんなに歌・演奏・録音と三拍子そろっていたのか。
新たな発見にうれしくなり、いわなの骨酒もついすすんでしまうのだった。

 

 

 

<ダスコ・ゴイコビッチ>


旧正月休みに香港から遊びに来た友人夫婦とCD屋を冷やかしていて、視聴コーナーでダスコ・ゴイコビッチの「アフター・アワーズ」という盤を何気なく聴いてみた。
ユーゴ出身のトランペット奏者のリーダー作で、元気のよい正統派ジャズだったが、視聴では得てしてよく聴こえるもので、今まで何度も駄作をつかまされている。
迷った末に結局その場は購入を見送ったが、その迫力ある演奏が耳に残り、自分のけちを悔いた。
友人夫婦の帰国日、世話になったお礼だと袋を渡され、中を見ると何とその断念盤が入っていた。感激と同時に彼らの観察力の鋭さに感服した。
毎年この時期になるとこの盤を思い出す。
2010年の旧正月元旦は2月14日。今年の彼らは関西あたりで楽しんだようだ。

 

 

 

<追悼・浅川マキ>


その日のライブは特別だった。
2005年に実現した、浅川マキとナミさんこと南正人との最初で最後のデュオ。
浅川マキはいつもより楽しそうで、ナミさんは心なしかやや緊張の面持ちだ。一生ライブでは聴けないと思っていた「あたしのブギウギ」に感涙。
その店の楽屋は客席のそばにあり、あいさつに行こうと思った、しかし終演後には、その楽屋に入る気は失せていた。そのまま店を出た。
結局それが、わたしにとっての最後の浅川マキだった。
あの複雑な気持ちが何だったのかわからないが、ただ、これからも日常的に彼女の歌を聴いていければそれでいい。そう思った。
2010年1月17日、浅川マキ急逝。死と別れを歌いつづけて、楽旅の先で、ひとり逝ってしまった。

 

 

 

<キング・クリムゾン>


冬になると「村上の気候にはプログレが似合う」という名言(?)を思い出す。
プログレとはプログレッシブ・ロックの略称で、ロック音楽の一つとされているが、何をもってプログレというのかわたしには今ひとつ判然としない。
プログレの名盤というものに耳を傾けると、無機的で冷たい感じを受ける。そしてそれは村上の、とくに初冬のどんよりあかぬけない天気に妙に合うのである。
キング・クリムゾンは60年代から活躍するプログレ界の重鎮だが、その冷たくも劇的で壮大な曲々を聴きながら、冷え込む夜にお燗で一杯というのもまた一興。
名盤『レッド』の最後を飾る大曲「スターレス」には、大吟醸のぬる燗と飯ずしが極上のお友ではないだろうか。

 

 

 

<JAZZ IN ろくでなし>


米国の日本文学研究者でジャズピアニストでもあるマイク・モラスキーは、70年代東京での留学中、ジャズ喫茶をハシゴすることが趣味だったという。粋な留学生である。
彼は著書『戦後日本のジャズ文化』の中で、「ジャズ喫茶は、世界的にも、という以前に日本の中でもきわめて特殊な文化空間」と書いている。外国人の彼にとって、日本のジャズ喫茶はどれほど新鮮だったことだろう。
90年代初めの京都で、わたしは初めてジャズ喫茶という存在を知った。
「ジャズインろくでなし」。
せまくて薄暗い店内には演劇などのポスターが貼り巡らされ、トイレは落書きだらけ。棚にカウンターにと無秩序に並べられたジャズのレコード(実はある程度の秩序があることを後に知る)。浅川マキの歌声が妖しく響き、そこにいるのは今まで出会ったことのない種類の人々。会話。ジントニック。
ロックと中国語にしか興味がなかった青二才にとって、そこは何もかもが新鮮で、強烈な衝撃があった。
ろくでなしは、わたしにとってまさしく「きわめて特殊な文化空間」だった。
その後足しげく通ったわけでもないが、たまに出かけて行っては浅川マキをリクエストしてマスターの横田さんに煙たがられた。と思う。
会社勤めを経て、2000年の初め、わたしは再び京都にいた。村上で店を出すべく、横田さんに教えを請うた。
初めてろくでなしのカウンターの中に入ったときの緊張は今でも鮮明に覚えている。知らないジャズのレコードを自分で選んで聴けるのがうれしかった。
混雑時に焼きソバを注文するお客がうらめしかった。
まじめすぎると言われ、どう不まじめになろうか真剣に悩んだ。
二ヶ月あまりだったが、せまいカウンターの中でそれは多くのことを教わった。
村上駅の目の前に楽屋という小さな店を開いて早九年が過ぎた。
横田さん、ろくでなしが恋しゅうございます。

 

 

 

<峰厚介>


女学生がひょんなことからジャズに挑戦する映画「スウィングガールズ」が好きで、今でもたまに晩酌の友に観ることがある。
作中ジャズの曲が多く使われているが、竹中直人扮するジャズマニア小澤先生の趣味がとりわけ興味深い。
オーネットコールマンなどフリージャズ系奏者の名盤が自室の壁にかけてあり、ブランデーを片手に聴いていたレコードが峰厚介の傑作「アウト・オブ・ケイオス」(1974)。
ジョンコルトレーンばりのクールなテナーサックスが映画を見事に引き立てていた。
ジャズの趣味もさることながら、サックスを三日坊主で投げ出すところなどもわたしと同じで、実に共感が持てる小澤先生であった。

 

 

INFO

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お酒とコーヒーと音楽の店 楽屋の誕生秘話。そんなことがあったんですね、と心の中でつい呟いてしまいます。新しいことを始めるときの期待と不安。いろんなものを抱えながら重ねた年月は、かけがえのない宝物になっていくんですね。

 

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